過去のtext
(読書記録)『汗の果実』(松本てふこ:著、邑書林、2019)
2026.02.25
2019年刊行の俳句作品集です。個人的に好きな句を引用します。
錠剤をたくさん持つて遠足に 松本てふこ
旧姓が春の嵐に飛ばさるる
花は葉にまたねとうまく笑はねば
春寒の歩くほかなき家路かな
水温むラッコにとほき余生かな
船頭はバイクで帰り雲の峰
八月十五日正午やトイレ待ち
金風や首にうるさき社員証
洞窟の画像眺めて夜業かな
冬暁の小高き山として夫
梅見して返事はすべて大丈夫
この句集を初めて読んだ時には、私は今以上に遥かに愚かで無知だったので、この句集の句にフェミニズムや労働における苦悩から発したメッセージが込められていることをしっかりと受け取っていなかったということを今再読して感じます。
そのような句を、ある意味では俳句の正統な(季語の機能に基づく)美意識や楽しみ方と親和的なスタンス(もしくは、それらを崩壊はさせないスタンス)で作っていることが、読みやすさ/受け取りやすさとしてはたらいているのが特徴となっていると思います。
いわゆる写生の句やそれに近い句も多く載っており、多くの人が楽しめる句集です。
たたまれしごとてふてふの死んでをり
秋蝶といふ一枚のからだかな
柚子湯出てひとりひとりのからだかな
不健全図書を世に出しあたたかし
メロン切る好きなバンドが解散する